PP405とは?失われた毛を再生できるのか?従来のAGA薬との違いと実用化時期について【2026年最新】

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Time誌の「2025年最優秀発明」に選ばれ、Google Venturesからの出資でも注目を集めているPP405。フィナステリドやミノキシジル以来、約30年ぶりのパラダイムシフトになる可能性がある新薬候補だ。

これまでのAGA治療では、フィナステリドやミノキシジルのように「抜け毛を抑える」「今ある髪を太く育てる」治療が中心であった。一方、PP405は、髪を作るもとになる細胞に働きかけ、眠っている毛包を再び活動させることを目指している点が特徴である。

ただし、PP405はまだ開発中の薬である。日本国内では承認されておらず、現時点で一般的に使用できる治療薬ではない。

この記事では、PP405の特徴や従来薬との違い、臨床試験で分かっていること、実用化までの見通しについて、できるだけわかりやすく解説する。

この記事のポイント
  • PP405は、AGA治療の新しい外用薬候補として注目されている
  • 髪を作る細胞を再び働かせることを目指す、新しいタイプの治療薬である
  • まだ開発中の薬であり、日本では承認されていない
  • 現時点では、承認済みのAGA治療を医師に相談しながら続けることが大切である
目次

PP405とは?開発の背景と特徴

PP405とは、米国のPelage Pharmaceuticals社が開発を進めている、男性型脱毛症(AGA)向けの塗り薬である。1日1回、頭皮に塗る薬として想定されており、これまでのAGA治療薬とは違う仕組みで働くと考えられている。そのため、医療分野だけでなく、投資家からも関心を集めている薬剤だ。

現在、AGA治療で広く使われているフィナステリドやミノキシジルは、主に脱毛の進行を抑えたり、今ある毛を太く育てたりすることを目的としている。これに対してPP405は、薄毛が進んだ部分に残っている「髪を作るもとになる細胞」に働きかけ、再び活動させることで、新しい毛の成長を促すことを目指した薬剤である。

開発元であるPelage Pharmaceuticals社は、PP405の主な特徴として以下の点を示している。

・休んでいる髪のもとになる細胞に直接働きかけること
・薄毛の原因とされるDHTという男性ホルモンの一種に頼らない仕組みで作用すること
・血液中にほとんど吸収されないため、体全体への副作用リスクが低い可能性があること

また同社は、GV(Google Ventures)、Main Street Advisors、Visionary Venturesなどから、シリーズBとして約1億2,000万ドルの資金調達を完了したと発表している。この調達規模からも、PP405に対する製薬業界や投資家の期待の大きさがうかがえるだろう。

※参考:Pelage Pharmaceuticals「Pelage Pharmaceuticals Announces Positive Phase 2a Clinical Trial Results for PP405 in Regenerative Hair Loss Therapy」
※参考:UCLA TDG「Pelage Pharmaceuticals Advances Clinical Program with First Patients Dosed in Phase 2 Study for Hair Loss」
※参考:日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」

PP405の作用メカニズムとは?毛が生えると考えられる理由

PP405の働きを理解するには、AGAで薄毛が進んだ頭皮の中で、どのような変化が起きているのかを知る必要がある。薄毛の部分について、「毛根が完全になくなっている」と思う人もいるだろう。だが、実際には髪を作る組織が完全になくなっているとは限らない。

薄毛が進んだ頭皮にも髪のもとになる細胞は残っている

AGAによって髪が細くなった部位でも、髪を作るもとになる細胞そのものは残っていると考えられている。問題となるのは、これらの細胞が本来の働きを十分に発揮できていない点である。

髪を作る細胞は、休止期、つまり髪が伸びずに休んでいる時期にとどまったままになり、成長期、つまり髪が伸びる時期へ移り変わるための合図を受け取りにくくなっているとされる。

PP405は、この休んでいる状態の細胞に再び刺激を与えることを目的に開発されている薬剤である。つまり、薄毛部分に残っている髪のもとになる細胞をもう一度働かせ、毛の成長サイクルを動かすことで、新しい毛の発生を促す効果が期待されているのである。

※参考:日本毛髪科学協会「髪の寿命(ヘアサイクル)」

ミトコンドリア代謝経路に着目した新たなアプローチ 

PP405は、髪を作る細胞の中にある「MPC」という働きを抑えることで、細胞がエネルギーを使う流れに変化を起こすと考えられている。現在報告されている流れを整理すると、以下のようになる。

ステップ1

細胞がエネルギーを作ったり使ったりする流れを、いつもとは別の方向へ切り替える。

ステップ2

その結果、細胞が動き出すサインのひとつとされる「乳酸」が増える。

ステップ3

この変化が刺激となり、休んでいた髪のもとになる細胞が動き始める。

ステップ4

動き出した細胞が休止期から成長期へ移り、新しい毛が生え始める。

なお、こうした作用は、マウスを使った開発初期の研究でも確認されている。PP405を投与したマウスでは、投与開始から30〜40日以内に正常な毛の成長が促されたとの報告があり、こうした基礎研究の結果が、現在の臨床試験につながっているとされる。

※参考:Flores A, Schell J, Krall AS, et al.「Lactate dehydrogenase activity drives hair follicle stem cell activation」Nature Cell Biology 2017(PubMed: 28812580)

従来のAGA治療薬とは異なるPP405の作用経路

フィナステリドは、DHTの産生を抑えることで抜け毛の進行を抑えることを目的とした薬剤である。ミノキシジルは、血管を広げる作用によって、すでにある毛根まわりへの血流を良くすると考えられている。

これに対してPP405は、ホルモンの働きに直接関わるのではなく、髪を作る細胞のエネルギーの使い方に働きかける点が特徴だ。従来薬とは異なるルートから休んでいる細胞を刺激し、毛の成長につなげる新しい仕組みを利用しているのである。

このように、PP405は既存薬とは効き方の入り口が大きく異なる。そのため、「約30年ぶりの新しい治療アプローチ」と評価されているのだ。

※参考:日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」

Phase 2a臨床試験の概要と結果

2025年6月、Pelage Pharmaceuticals社はPP405に関するPhase 2a臨床試験の結果を公表している。

試験の概要

発表されている試験内容は、以下のとおりである。

被験者数

78名。男性と女性の両方が含まれている。

対象

男性型脱毛症(AGA)の患者。さまざまな肌色や髪質の被験者が組み込まれている。

投与方法

0.05%のPP405ジェルを、1日1回頭皮へ外用する方法で行われた。

投与期間

4週間にわたって使用し、その後12週目まで経過観察が行われた。

試験デザイン

有効成分を含まない薬と比較する試験である。

主な結果

公表されている主な結果は、次のとおりである。

高度な脱毛がみられる男性のうち、31%で毛髪密度が20%以上増えたことが確認されている。一方、有効成分を含まない薬を使ったグループで同じ水準の改善がみられた割合は0%だった。

また、細胞が活発に増えているかを示す目安についても、使用開始から7日以内にはっきりとした上昇が認められている。

注目すべきポイント
これまで毛が生えていなかった毛穴まわりの組織から、新たな毛の成長が促されたとされる点である。さらに、一部の参加者では、使用開始から1週間以内に見た目の変化が確認されたことも報告されている。

一般的なAGA治療では、効果を実感するまでに6〜12ヶ月ほどかかるケースが多いとされる。そのため、PP405で示された変化の早さは、特徴的な結果だと考えられる。

加えて、参加者の血液中からPP405の成分は確認できないほど少なかったと報告されている。このことから、体全体に及ぶ副作用のリスクは比較的低い可能性がある。

ただし、今回のPhase 2a試験は、参加者数78名、使用期間4週間という小規模かつ短期間の試験である。長く使った場合の効果や安全性については、今後予定されるPhase 3試験でさらに確認する必要がある。

治療したグループでは31%に改善がみられ、有効成分を含まない薬を使ったグループでは0%だったという差は、統計的に明確だと報告されている。しかし現時点では、あくまで「期待できる初期データ」として捉えるべき段階であり、今後の追加検証を待つ必要があるだろう。

※参考:Pelage Pharmaceuticals「Pelage Pharmaceuticals Announces Positive Phase 2a Clinical Trial Results for PP405 in Regenerative Hair Loss Therapy」
※参考:UCLA TDG「Pelage Pharmaceuticals Advances Clinical Program with First Patients Dosed in Phase 2 Study for Hair Loss」
※参考:日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」

安全性プロファイルの現時点での評価

Phase 2a試験では、PP405について比較的良好な安全性が示されたと報告されている。公表されている内容を整理すると、主なポイントは以下のとおりである。

・血液検査では、PP405の成分は確認できないほど少なかったとされる。
・フィナステリドで指摘されることがある性欲低下や勃起機能への影響については、現時点で確認されていない。
・重い副作用も報告されておらず、試験では「使用しやすい薬である可能性がある」と評価されている。

さらに、PP405はDHTを抑えることで作用する薬ではない。そのため、ホルモンバランスへ直接影響する可能性は、理論上は低いと考えられている。

ただし、これまでに得られているデータは、78名を対象に4週間使用した限られた試験結果に基づくものである。長期間使った場合の安全性については、まだ十分に確認されていない。

今後実施されるPhase 3試験では、数百名から数千名規模の参加者を対象に、6〜12ヶ月以上の使用期間で検証が進められる見込みとされている。そのため、現段階では「短期的な安全性データは前向きだが、長期的な安全性はまだ分からない」と捉えるのが妥当である。

とくに、フィナステリドによる性機能関連の副作用を不安に感じ、AGA治療に踏み切れなかった人にとっては、ホルモンに作用しない治療薬の候補が出てきたことには大きな意味があるだろう。

こうした特徴から、PP405は「ホルモンに作用する治療を避けたい人」や、「男女どちらでも使える治療を求める人」にとって、新しい選択肢になり得る薬剤として注目されている。

ただし、現時点では開発段階にあるため、実際に使えるようになるにはPhase 3試験以降の結果を待つ必要がある。

※参考:Pelage Pharmaceuticals「Pelage Pharmaceuticals Announces Positive Phase 2a Clinical Trial Results for PP405 in Regenerative Hair Loss Therapy」
※参考:日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」CQ1
※参考:医薬品医療機器総合機構(PMDA)「プロペシア錠0.2mg/プロペシア錠1mg〈フィナステリド〉添付文書」(2023年8月改訂・第4版)

従来のAGA治療薬との違い

PP405を既存のAGA治療薬と比べると、作用の仕組みや使い方、副作用の傾向にいくつか明確な違いがある。

フィナステリドは、主に飲み薬として使われるAGA治療薬である。5α還元酵素という体内の働きを抑えることで、脱毛に関わるDHTの生成を抑える。効果を実感するまでには、一般的に6〜12ヶ月ほどかかるとされており、性欲の低下や勃起機能への影響など、性機能に関連する副作用が一定数報告されている。

ミノキシジルは塗り薬として使われることが多く、飲み薬タイプも存在する。血管を広げる作用によって、すでにある毛根まわりへの血流を促すと考えられている薬剤だ。効果が現れるまでの目安は4〜6ヶ月程度とされ、頭皮のかゆみや刺激感、体毛が増えることなどが主な副作用として知られている。

一方、PP405は塗り薬としての使用が想定されている開発中の薬剤である。

MPCという細胞内の働きを抑えることで、休んでいる髪のもとになる細胞を再び活性化させる仕組みだと考えられている。Phase 2a試験では、早い例では1週間以内に変化が確認されたと報告されており、血液中への成分の移行は確認できないほど少なかったとされる。また、Phase 2aの段階では重い副作用は報告されていない。

承認状況にも違いがある。フィナステリドとミノキシジルは、すでに国内で承認されているAGA治療薬である。これに対し、PP405はPhase 2a試験を終えた段階であり、まだ開発中の薬剤に位置づけられる。

フィナステリドミノキシジルPP405
投与経路内服が中心外用が中心(内服もあり)外用
作用の仕組み5α還元酵素の働きを抑え、DHTを減らす血管を広げる作用MPCの働きを抑え、髪のもとになる細胞を再び動かす
効果発現の目安6〜12ヶ月4〜6ヶ月最短1週間(Phase 2a時点)
主な副作用性機能関連の副作用頭皮の刺激感・体毛が増えること重い副作用なし(Phase 2a時点)
承認状況国内承認済み国内承認済みPhase 2a完了・開発中

3つの治療薬を比較したとき、最も大きな違いは治療の方向性にある。フィナステリドやミノキシジルは、脱毛の進行を抑えたり、既存の毛を太く育てたりする「維持・強化型」の治療といえる。

それに対してPP405は、眠っている髪のもとになる細胞に働きかけ、再び毛の成長サイクルを動かすことを目指している。つまり、休んでいる毛根まわりの組織を再び働かせる「回復・再生型」のアプローチとして期待されているのである。

※参考:日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」CQ1
※参考:医薬品医療機器総合機構(PMDA)「プロペシア錠0.2mg/プロペシア錠1mg〈フィナステリド〉添付文書」(2023年8月改訂・第4版)
※参考:KEGG MEDICUS「一般用医薬品:メディカルミノキシジル5%」

PP405と再生医療・PRP・メソセラピーとの違い

AGA治療の選択肢として、フィナステリドやミノキシジル以外に、再生医療やPRP(自分の血液から取り出した成分を使う治療)、メソセラピーが選ばれるケースも増えている。これらの治療法とPP405は、いずれも「発毛を促す」という目的では共通しているが、働きかける部分は大きく異なる。

再生医療(幹細胞上清液など)との違い

幹細胞上清液を用いた再生医療は、髪の成長に関わる成分を頭皮へ補うことで、毛根まわりの環境を整えることを目的としている。男女ともに使用でき、副作用も比較的少ないとされる一方、費用が高額になりやすい点が課題だ。

また、髪を作る細胞そのものを直接動かす仕組みではないため、休んでいる細胞を再び働かせる力は限定的だと考えられている。

これに対してPP405は、髪を作る細胞のエネルギーの使い方そのものに直接働きかける薬として開発されている。注射ではなく、頭皮に塗って使う点も、再生医療とは大きく異なる特徴だ。

PRP・メソセラピーとの違い

PRP療法では、自分の血液から取り出した血小板を多く含む成分を頭皮へ注入し、そこに含まれる成長に関わる成分によって、毛根まわりへの栄養補給や血流改善を狙う。メソセラピーも、成長に関わる成分や薬剤などを頭皮へ注入するという点では似た治療法である。

これらの治療は、自分由来の成分を用いることもあり安全性は比較的高いとされる一方、効果に個人差があり、継続的な施術が必要になることが多い。PP405は、注入を行わずに塗り薬として使う想定の薬剤であり、髪を作る細胞そのものの働きに関わる点が、PRPやメソセラピーとの大きな違いだ。

※参考:公益社団法人日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」

PP405は再生医療には分類されない

PP405は、細胞や血液成分そのものを体に入れる治療ではない。あくまで薬の成分を頭皮へ塗るタイプの薬剤として開発されているため、法的な区分としても再生医療には分類されないとされる。

そのため、「PP405は再生医療の一種である」と理解するのは正確ではない。今後、PP405が国内外で承認された場合も、医療用医薬品として位置づけられる可能性が高いと考えられる。

※参考:厚生労働省「再生医療・遺伝子治療等について」
※参考:医薬品医療機器総合機構(PMDA)「再生医療等製品」

実用化までの想定スケジュール

PP405が実際に使用できるようになるまでの流れは、現時点で公表されている情報をもとにすると、以下のように整理できる。

2024年

Phase 1試験が完了している。この段階では、安全性や薬が体の中でどのように扱われるかが確認され、その内容は米国皮膚科学会(AAD)2024で発表された。細胞が増えているかを示す目安について、はっきりとした上昇が報告されている点も注目される。

2025年6月

Pelage Pharmaceuticals社は、PP405のPhase 2a試験結果を発表した。78名を対象とした試験で有効性が示され、高度な脱毛がみられる参加者のうち31%で、毛髪密度が20%以上増加したとされている。また同年、PP405はTime誌の「2025年最優秀発明」にも選ばれており、再生型の脱毛治療薬候補として関心を集めている。

2025年

Pelage Pharmaceuticals社は、1億2,000万ドル規模のシリーズB資金調達を完了している。GV(Google Ventures)などが主導したとされ、この資金はPhase 3試験の実施や製造体制の整備に使われる予定である。

2026年

Phase 3試験の開始が計画されている。対象は男性と女性の両方で、数百名規模の参加者を対象に、6〜12ヶ月程度の使用期間が設定される見込みだ。

2027〜2028年

Phase 3試験の結果公表と、FDA(米国食品医薬品局)への新薬承認申請が想定される時期である。FDAの審査には、一般的に10〜12ヶ月ほどかかるとされている。

2028〜2030年

順調に進んだ場合、FDAによる承認と米国での販売開始は、この時期になる可能性がある。日本での承認については、米国よりもさらに1〜3年ほど遅れる可能性が高いと考えられる。

※参考:Pelage Pharmaceuticals「Pelage Pharmaceuticals Announces Positive Phase 2a Clinical Trial Results for PP405 in Regenerative Hair Loss Therapy」

日本国内で使用できる時期はいつか

PP405が米国FDAで承認されたとしても、日本国内で使用するには、PMDA(医薬品医療機器総合機構)による承認を別途受ける必要がある。

場合によっては、日本人を対象とした追加の臨床試験が求められる可能性もある。

そのため、日本で一般的に販売される時期は、早くても2030年以降になると考えられる。

なお、正式承認の前に、クリニック単位で個人輸入や自由診療として提供される可能性も理論上はある。しかし、安全性や品質管理の面を考えると、承認済みの治療薬を医師の管理下で使用することが望ましい。

※参考:PMDA「承認審査業務(申請・審査等)」
※参考:厚生労働省「医薬品等を海外から購入しようとされる方へ」

PP405を待つべきか?後悔しないための判断軸

PP405は、将来のAGA治療において大きな注目を集めている開発中の薬剤である。

しかし、「PP405が承認されるまで何もせずに待つ」という選択は、後悔につながる可能性が高い判断だといえる。

「新しい薬が使えるようになるまで様子を見たい」と考える人は少なくない。だが、実際には待っている間にも薄毛は進行する。時間が経つほど髪を作る組織の状態は悪化し、治療で回復を目指せる範囲が狭くなっていくケースもある。

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新薬を待つことによるAGA進行のリスク

海外の報告では、治療を受けずに経過した患者で、初期〜中等度の薄毛から、約2年で高度な薄毛まで進行したケースも示されている。その過程で髪を作る組織が小さく弱くなり、改善が難しくなったとされる。

AGAは進行性の疾患である。そのため、治療を始めるタイミングが遅れるほど、後から元の状態に近づけることは難しくなりやすい。

つまり、「今は何もしないで待つ」という判断そのものが、将来の治療結果を左右する大きな分かれ道になり得るのである。

※参考:日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」

AGAは時間が経つほど、再活性化できる毛包は減っていく

PP405は、休んでいる髪のもとになる細胞を再び働かせる薬剤として開発が進められている。ただし、すでに大きく弱った毛根まわりの組織や、完全に失われた組織まで再生できるのかについては、現時点では明らかになっていない。

AGAを放置して進行させるほど、将来的に再び働かせる対象となる毛根まわりの組織そのものが減っていく可能性がある。つまり、新薬を待っているあいだに今ある髪の土台を失ってしまうと、治療の選択肢と回復の可能性をどちらも狭めてしまうことになりかねない。

受診を検討する目安は、次のような変化がある場合だ。

・生え際の後退や頭頂部の薄毛が、以前よりも目立つようになってきた。
・抜け毛の量が明らかに増えたと感じるようになった。
・髪の一本一本が細くなり、地肌が透けて見える範囲が広がっている。

このようなサインがある場合は、できるだけ早めに医療機関で相談することが重要である。

既存のAGA治療を続けながら新薬の進展を見守ろう

PP405が実用化されるまでには、早くても2〜4年ほどかかると見込まれている。その間にもAGAは進行するため、何もせずに待つよりも、すでに承認されている治療を活用しながら経過を見るほうが現実的だ。

具体的には、フィナステリドやミノキシジル、低出力レーザー治療(LLLT)など、一定の根拠がある治療を続けつつ、PP405をはじめとする新薬の動向を確認していく形が望ましい。

副作用が不安な場合でも、自己判断で個人輸入薬を使ったり、治療を途中でやめたりするのは避けるべきである。医師に相談しながら、薬の種類や使い方、治療の組み合わせを調整することが、将来的な後悔を減らす近道になるだろう。

※参考:PMDA「医薬品副作用被害救済制度」
※参考:厚生労働省「医薬品等を海外から購入しようとされる方へ」

PP405は開発中の新しいAGA治療薬

本記事では、開発中の新しいAGA治療薬であるPP405について、公表されている臨床試験データや開発状況をもとに整理した。重要なポイントは、次の3つである。

記事のまとめ
  • PP405は、休んでいる髪のもとになる細胞を再び働かせることを目指す塗り薬である。ホルモンに頼らない仕組みを持つ点が、従来薬との大きな違いだ。
  • Phase 2a試験では、高度な脱毛がみられる参加者の31%で、毛髪密度が20%以上増加したと報告されている。さらに、比較的早い段階で変化が確認された点も特徴として挙げられる。
  • ただし、実用化までは少なくとも2〜4年ほどかかる見込みである。その間は、フィナステリドやミノキシジルなど、すでに治療実績のある方法を続けながら、新薬の動向を見守ることが現実的だ。

PP405の登場を待っている間も、AGAの進行が止まるわけではない。新薬に期待しつつ、今できるAGA治療で髪の土台を守ることは両立できる選択肢である。

薄毛の変化が気になり始めた場合は、早めに医師へ相談し、適切な治療方針を検討することが大切だ。早い段階で根拠に基づく治療を始めることが、将来の後悔を減らすことにつながるだろう。

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PP405に関するよくある質問

PP405は日本でいつ使えるようになるのか

現時点では、PP405が日本で使用できる時期は決まっていない。Phase 3試験は2026年に開始される予定とされており、米国でFDA承認を受けるとしても、早くて2028年頃になると見込まれている。

日本で使用するには、米国での承認とは別に国内での承認手続きが必要だ。そのため、日本で一般的に使えるようになる時期は、米国よりさらに1〜3年ほど遅れる可能性がある。現実的には、2030年以降になると考えられるだろう。

PP405は女性にも使えるのか

Phase 2a試験には、男性だけでなく女性も参加している。また、今後予定されているPhase 3試験でも、女性を対象にした検証が行われる計画とされている。

PP405はホルモンに直接作用しない仕組みとされているため、女性への応用も期待されている薬剤だ。さらに、休止期脱毛症や、化学療法後に起こる脱毛への活用についても、研究段階にあるとされる。

※参考:Pelage Pharmaceuticals「Pelage Pharmaceuticals Announces Positive Phase 2a Clinical Trial Results for PP405 in Regenerative Hair Loss Therapy」
※参考:UCLA TDG「Pelage Pharmaceuticals Advances Clinical Program with First Patients Dosed in Phase 2 Study for Hair Loss」

PP405ではどのような副作用が報告されているのか

Phase 2aまでの試験では、重い副作用は報告されていない。また、血液中からPP405の成分が確認できなかったとされていることから、体全体への影響は限定的である可能性が示されている。

フィナステリドのようにDHTを抑える薬ではないため、性機能に関する副作用は理論上少ないと考えられている。ただし、長く使った場合の十分なデータはまだ公表されていない。安全性を判断するには、今後のPhase 3試験の結果を確認する必要がある。

PP405はフィナステリドやミノキシジルと併用できるのか

PP405は、フィナステリドやミノキシジルとは作用の仕組みが大きく異なる。そのため、理論上は併用できる可能性があると考えられている。

ただし、実際に併用した場合の効果や安全性については、現時点で十分な臨床データは公表されていない。今後のPhase 3試験以降で、併用に関する検証が行われる可能性もあるだろう。

※参考:日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」

PP405は市販の育毛剤として購入できるようになるのか

PP405は、医療用医薬品として開発が進められている薬剤である。そのため、承認された場合でも、医師の処方が必要な処方薬として扱われる可能性が高い。

一般的な市販の育毛剤やOTC医薬品のように、ドラッグストアなどで自由に購入できる形になる可能性は低いと考えられる。

※本記事は、海外で発表された臨床データおよび公開情報をもとに医学情報を整理したものであり、特定の治療法を推奨・保証するものではない。
※PP405は2026年5月現在、日本国内では未承認の開発中薬剤である。
※記事内容は執筆時点の情報であり、今後の臨床試験結果によって変更される可能性がある。

この記事を書いた人

『日本メディカルスキルアップ』は、2009年から、開業医・勤務医・研修医の先生方を対象に、明日の診療にすぐ役立つセミナー(講習会・研修会)を対面およびオンラインで企画・運営してきました。本メディアでは、その経験をいかし、近年注目を集める「オンライン診療」、とくにAGA(男性型脱毛症)治療のオンライン診療に関する最新情報から基礎知識、クリニック選びのポイントまでを、わかりやすくお届けしています。

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